C4 「 白百合の庭 -特別展示『それから』-」

白百合の庭 − 特別展示『それから』−

雨は夕方歇んで、夜に入ったら、雲がしきりに飛んだ。その中洗った様な月が出た。代助は光を浴びる庭の濡葉を長い間縁側から眺めていたが、仕舞に下駄を穿いて下へ降りた。固より広い庭ではない上に立木の数が存外多いので、代助の歩く積はたんと無かった。代助はその真中に立って、大きな空を仰いだ。やがて、座敷から、昼間買った百合の花を取って来て、自分の周囲に蒔き散らした。白い花弁が点々として月の光に冴えた。あるものは、木下闇に仄めいた。代助は何をするともなくその間に曲んでいた。

−『それから』十四の十一(連載第九十二回)より

夏目漱石は1867年(慶応3年)、明治維新(大政奉還)の年に生を受け、1907年(明治40年)朝日新聞社に入社して職業作家となると同時に現在の新宿区早稲田南町に居を構え、漱石山房と呼ばれたその借家に1916年(大正5年)に息を引き取るまでの9年間住み暮らし、10編の小説を書き上げた。新宿区立漱石山房記念館は、その跡地に、漱石山房の一部を再現・展示し、漱石に関する資料・書籍の展示・閲覧を行なう為の記念建築である。

漱石山房で執筆した小説の一篇である『それから』は、1909年(明治42年)6月から10月までに朝日新聞紙上に連載された新聞小説である。同作の14章を読み、2018年6月〜10月の間に漱石山房記念館が主催する「白百合の庭」と題された小説『それから』の特別展示を構想し、当展示に通底するコンセプトドローイングを描きなさい。

尚、展示会場は作者自らが街を歩くことで、漱石山房記念館界隈の特定の場所を選定すること。

 

提出物:ドローイング275×275mm

枚数:表紙含め2枚以上

材料:表現する方法に準拠した材料を選択すること。

 

A+++ 1x16a016 稲坂まりな

149

「地を這う」と題された、都市を克明に描き、フレーミングしながら漱石の生きた時間と現在を結びつける提案の作品。作者は、「それから」の空間をイメージしながら都市を遊歩し、かつそれぞれの時間を彫琢した。代助が「幸( ブリス)」と呼んだその一瞬の生きた時間を見事に表した傑作である。(早田)

 

A+++ 1x16a166 吉岡桜子

35

雨が降った後の水たまりを二人の思いが入り混じるように美しく描いている。その水たまりに百合を重ねることによってこれから行くすえの運命をはかなくても強く描いている作品である。( 植村)

 

A+++ 1x16a081 鈴木新

61

鉛の発見= 綻びへのシークエンス

都市に内在する鉛を発見し、抽出し、それぞれに意味づけを与えた作品。日常の風景を展示室に変えるアイデアは面白い。また都市の空隙に着眼し、都市全体が展示空間となる提案はよく出来ている。(山村)

 

A+++ 1x16a002 秋山曜

12

雨上がりの庭と白百合を水たまりの中に描いている。インスタレーションとして水たまりをコンセプトにしているのが良いが、月が写ると同時に、現代都市が少しでも写り込んでいるともっとよかったと思う。(小林)

 

A++ 1x16a125 原田佳典

2MX-3140FN_20171113_125437_027

徒歩圏内の公園に新しい展示室を作る提案。展示自体は目新しいものではなく、新築することもあまり必須に思えないが、本館との距離感覚やそこまでの経路、道標などが適切。( 三浦)

 

A++ 1x16a061 小浜まほろ

34

浮遊する窓/落下する窓/他者のいる窓/風景のない窓/天空の窓/架空の窓

窓は諸々の関係性の空間である。ゆえにそれは、展示になり得る可能性を秘めている。( 山村)

 

A++ 1x16a050 小田切寛樹

51

「過去カオル光景」と題された百合の花の蒔かれた墓地と、門を描いた作品。おそらく漱石の眠る小石川の墓地を舞台として、「それから」の後編と言われることの多い「門」を「それから」のそれからとして描いたのであろう。安易な図式に頼らず、絵の力で勝負して欲しかった。( 早田)

 

A++ 1x16a065 佐藤大哉

41

「白百合の庭」を現代( の都市) として捉え、「それから」の追体験を行う行為の中に近代化が進む中での風景の描写と100 年後の風景との間のズレと残ったものの狭間を行き来する。その体験が結果的に「庭」となるのかもしれない。( 小林)

 

A++ 1x16a100 東野友紀

41

白い百合の花を代助宅から平岡宅に向かう道の途中にある場所に蒔き散らすことで、代助の平岡に対する自分の立ち位置を示すとともに、彼の感情をよく表している。その百合は、木々に流れるように巻きついた布から淡い光を通して白く光るだろう。布と百合で場面を描くことにより、彼の心の中の思いや彼のいる空間を美しく表現している。( 植村)

 

A++ 1x16a043 加藤公花

57

記念館の敷地内に、白百合の形のテントを張る提案。あまりにも直接的な提案で逆に新鮮。

( 鈴木)

 

A++ 1x16a054 吉川伊織

45

「白百合と歩く」

観覧する人々が白百合を持ちながら巡る提案。一人一人が主体となり展示を構成する一員となると言うことなのか。その光景を頭に浮かべた時に出てくるドローイングとアウトプットなのか少し疑問が残る。 ( 和田)

 

A++ 1x16a012 石田彩果

46

ビル群の中を巡る川と、水の波紋、そこに咲きほこる百合の花たち。変わるものと変わらないもの、様々な時間軸が一枚のドローイングの中に共存する背景のグラデーション。細かい花粉?が世界をまとめ上げている。( 三浦)

 

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中